タワレコのおだんごさんのとき

Twitterでフォローしていただいている方の半分以上は、おそらく私がUstream「K-POP LOVERS!」や、K-POP関連のインストア・イベントでMCを担当していた時期に、知って頂いたかなと思うので、当時のお話を。ただ、出演していただいたアーティストの方の話ではないです。


タワレコのおだんごの人の誕生

私が髪の毛をアップにしておだんごヘアーを固定にしてUstやイベントに出ていたこともあって、他のメディアに出させていただくと、「ナガサワさん」の他に「タワレコのおだんごの人」と言われることが多かったです(あとは、タワレコさん、おだんごさん、悪口的なやつでたまねぎって書かれてたのは見たことあります笑)。


おだんご時代のわたくし。これはニッポン放送さんのインターネットラジオ局で番組をやっていた時の写真です。

もともと、Ustのキャラ作り、覚えていただくためにイメージを固定させよう、というところからこの髪型にしたのですが、韓国にはここまでのアップ・スタイルのおだんごをしている人はほとんどいないらしく(韓国の場合はもう少し下に髪の毛をまとめる)、K-POPのお仕事をする上ではこのキャラ決めは正解だったなぁと、あとから思いました。いわゆる「自己プロデュース」みたいなものですね。

…と、まず見た目は決めたけど、Ustreamは自分で毎週顔を出して、話さなくてはいけない。いまはいろんな配信チャネルがありますが、当時ネット配信自体そこまで多くはなかったし、ましてや素人の会社員の私たちが好きなことを話す番組、というのはなかなかのハードル。その前に知り合ったみなさんもたくさん見てくださって、企画に協力していただいたりもしていたのですが、私自身をどうしていくか、というのは別の問題で。最初にぶつかった壁は、「K-POPを好きな熱量はとても高いけれど、それだけではどうにもならない」でした。


求められていることはなんなのか

Ustream「K-POP LOVERS!」の序盤、私の中で一つの打開策になった企画が、番組がスタートして3か月が経過した、2011年06月23日に配信の「SHINee」特集です。SHINeeが日本デビュー・シングル”Replay -君は僕のeverything- "を発表し、タワーレコードのサマーセールのキャラクターになったタイミング。それまでに何度かアーティスト特集はやっているのですが、友達やタワレコのスタッフを呼んで、好きなことをあれこれ話す感じだったので、私と相方のヨシダさんの2人で挑むのはここが初めてです。

いまも昔も、K-POPのファンは熱量が高くて、まっすぐな方が多い。私もK-POPは好きですが、すべてのグループのことを同じ熱さで話すことは不可能ですし、ましてはファンの方の方が詳しいことは明白です。じゃあ、「タワーレコード」という看板を掲げている番組をご覧頂いている人が求めている「熱量」以外の部分はなんなのか。

それは、当たり前だけど「音楽が好き」「音楽に詳しい」という視点なのでは?

「アーティストが好き」という話だけにフォーカスすると、容姿やキャラクター、メディア出演での話など、音楽以外の要素もたくさんあるので、音楽的な話を強くしていくが手っ取り早い。とはいえ、ムーヴメントは音楽だけで作られているわけではないし、間口を広くしていくことを考えると、音楽的な要素が強すぎて専門性が高くてもダメなんですよね。あくまでライトに。わかりやすく届けることも必要。

SHINee特集と謳っている以上、SHINeeを好きな方もご覧になる可能性が高い。SHINeeのダンスのかっこよさや歌のうまさは、番組なので、この特集ではSHINeeの楽曲を構成するクリエイターをメインに、お話ししました。というのも、私自身がアイドルソングのクレジットを見るのが好きだったので。

当時の進行表が見当たらなかったんで、クレジット一覧とメモ。ピンク部分はタイトル曲。それにしても字がヘロヘロ。一番下の切れている部分は、海外のクリエイターの曲もたくさんあるし、ヨンジン先生が関わっている曲が少ない、みたいなことです。この回が結構評判がよくて、アーティスト特集をする際には、この感じの話がメインになりました。


名前と顔を出して仕事をする上で気をつけていたこと

タワレコのUstのMCを担当して、名前と顔を出して仕事をしていて、気をつけていたことがいくつかあります。


・普段からネガティブなことは言わない、言い回しに気をつける

・音楽に関すること(CD、音源、ライヴ、ミュージックビデオ)のことを中心に見ていく

・可能な限り現場(店舗もライブも)に行く

・J-POPと比較できるようにする

…こんなところかな?


普段からネガティブなことは言わない、言い回しに気をつける

「仕事多くて疲れるなぁ」とか「会社で上手くかないなぁ」とか、そういうことではなくて、基本はUstreamで触れる可能性が高い、アーティストや商品に対して。Ustreamやイベントはすべて生だったので、ふとした瞬間に、普段のクセとか考え方みたいなものが、ぽろっと出てしまう可能性があるので、当時はかなり気をつけていました。言い回しに関しては、日本語の勉強をしているアーティストと接するときにはなるべくわかりやすい、優しい日本語を使うようにしていて(理解しやすいように)、普段話す時も「これは誤解を与えてしまうかも?」ということがないように務めていました。


音楽に関すること(CD、音源、ライヴ、ミュージックビデオ)のことを中心に見ていく

さっきのSHINee特集からの流れで、私が仕事にしているのは「音楽」に関すること。例えば「○○くん超かっこいい!性格もいいし!かわいい!」みたいなことは仕事では求められてないな、ということは理解していたので、音楽に特化した話を中心にしていました。ただ、結構難しいのが、軸として持っておかなければいけないのは「日本の小売店から見たK-POPシーン」なので、音楽のこととなると、となるとアイドル以外も入ってくる。ですが、小売店の視点でいうと、日本で商品があって売れるものの話がメインになるので、アイドル以外のデジタルシングルは参考程度、という感じになってはいました。


可能な限り現場に行く

そのあと担当していたJ-INDIESもそうなんですが、アーティストと会場の熱量がどんな感じになっているかをみたい、というのが一番かな…。音源は音源の良さがあって、ライブはライブの良さがあるけど、日本はライヴの数が多いので、どっちもよくなきゃいけないっていう、なんとも欲張りな市場です。K-POPの場合はテレビサイズでパフォーマンスが収まってしまうことが多いんですが、国際フォーラムホールA〜アリーナクラスになってくると、見せ方としてそれだけじゃ難しい。その辺りを工夫しているかどうか、みたいな部分も見ていました。

個人的にはファンミはあまり興味がなくて、理想を言えば、日本制作のワンマンライブが好きです。ライヴ・ネイション・ジャパンか、エイベックス・ライヴ・クリエイティヴが制作しているライヴは、結構テンション上がります。

店舗にいくのは、店のテンションがどんな感じなのかをみたいので。渋谷店にはよくいましたし、タワレコは全国に80店舗ぐらいあるので、発売日前後のツイートで展開を見てました。


J-POPと比較できるようにする

他のK-POP担当の方はK-POP専門の方が多いので、ここはあまりやっていない気はするんですが、ヒット・チャートのなかに入ってるJ-POP曲の話はもちろん、制作陣とか。他の国に比べて日本のCD市場は大きくて、日本で発売される韓国出身歌手のCDのなかには日本オリジナル・ソングも多数あるので、そのあたりはなるべく話せるように。

例えば、CODE-Vの「君がくれたもの」の作詞/作曲は平義隆さん、編曲&プロデュースはJin Nakamuraさんです。平さんは福岡出身のThe LOVEというバンドでデビューされていて、嵐の「明日の記憶」を提供しています。(The LOVEの「ひまわりの観覧車」名曲!)。Jin Nakamuraさんの大ヒット曲といえば、EXILEの「Ti Amo」や、山下智久さんの「Loveless」。あと、いまX4で活動されている松下優也さんがソロで活動されていた時のプロデュースも。

U-KISSも、「Tick Tack」と「Forbidden Love」は、ライアン・ジュンさんが名を連ねてたりするんですよね。K-POPシーンの大御所や…。プデュの「PICK ME」とか。


…みたいな感じです!(長くなってしまった)

あとは、Ustで毎月チャート発表もしていたので、そこはデータとして入れてました(もともとEXCELが得意なので、チャート分析をガンガンしてたら、周りから結構驚かれてた、そういうタイプに見えないみたいで)。


ファンでいることの考え方

ここまで、あーだこーだ書いてきましたけど、やはり基本は「K-POPが好きである」という部分は大きかったと思います。よく「K-POPは仕事だから見てるんですよね」って言われてたんですが、仕事だけだったら、あんなにたくさんいるアーティストのチャートアクションや楽曲をチェックして、ライブにも足を運んで、メディア出演情報もこまめに見て…なんてできないよ…。先日、SHOWROOMの前田さんのオールナイトニッポンに関ジャニ∞の大倉くんがゲストで出ていて。いま大倉くんは関西ジャニーズJr.の「なにわ男子」というグループのプロデュースをされているんですが、その時こんな話がでておりまして。


プロデュースでいうと、ジャニーズでいうと、ファンの人たちが考えることが一番のものだと思うんですよね。一番のプロデューサーになれると思うんですけど、なんで、一番は自分がファンになることだと思うんですよ。関西Jr.をなんかするってなったら、自分が一番好きじゃなきゃいけないしっていう前提があるとして 。

それが、愛をもってやることっていうところがあるんですけど、で、それプラス、自分らがファンの皆さんの斜め上の考えることっていうのが、自分らが提供していく…なんかそういうことなのかなって思うんですけどね。僕らもそうなんですけど、新しいアルバムを出すときも、そうなんですよね。自分らがやりたいことと、求められていることのバランスっていうので、みんな悩んでると思うんですけど、そこのバランスに気づくのにみんな苦労してて。


本当にそうの通りだなぁと。

私の場合は、「ファンでいること」は、そのアーティスト個人が好きというわけではないんですよね。前にどこかで話したかもしれませんが、アーティストは、実際に前に出る本人の他にも、マネージメント、レコード会社などのスタッフのみなさんとともに作り上げるプロジェクトだと思っていて。そこでの足し算、引き算でいろんなことが構成されていく。いくらそのアーティストが作る楽曲が好きでも、その他がどうも合点がいかないと、続けていくのは難しいですし。それは、仕事をしているときもいまも一緒だし、自分がJ-INDIESのレーベルでA&Rをやっていたときにも、関わっている人の数は異なりますが、チームとしてアーティストにどう関わっていくか、みたいな部分と、それがアーティストの音楽を聞いてくださる方にどう見えていくか、というのは考えていました(3年ぐらい関わるアーティストがいればもっとそのあたりを突き詰められたんだろうけど、1年弱ぐらいの人が多かったから、そこは残念だった)。


おだんごを辞めたとき

K-POPのお仕事も落ち着いてきた2016年の秋ぐらいに、髪をバッサリ切り、おだんごヘアとはさよならしました。このタイミングでJ-INDIESメインの仕事に完全にシフトしていたことと、タワーではもうK-POPメインになることはないな、と、どこかで考えていたので。まあ年齢的にそろそろおだんごしてる場合じゃないっていうのもありましたけど(笑)。なんだろう、この失恋感…。


5年間のおだんご生活で思ったこと

あくまでUstream「K-POP LOVERS!」での見た目を固定させよう、というところからスタートした私のおだんごさん生活ですが、気づけばこれが1つのブランドのような感じになっていきました。この髪型にしているときは背筋もなんだかシャキッとしているし、いつもどこか緊張しているような感じもあり。ある種の気合いスイッチみたいなもんだったんだと思います。

とはいえ、おだんご時代に気をつけていたことや、ファンでいることの部分は、いまもいろんなシーンにおいて変わらないので、その意識が備わった、という経験ができてよかったです。


特にオチもない話で恐縮ですが、以上です。